大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

広島高等裁判所 平成7年(行コ)5号 判決 1997年5月23日

広島県呉市焼山泉ケ丘二丁目八番二〇号

控訴人

中島省三

右訴訟代理人弁護士

笹木和義

高盛政博

広島県呉市西中央二丁目一番二一号

被控訴人

呉税務署長 藤嶋義久

右指定代理人

村瀬正明

徳岡徹弥

大原邦夫

木村宏

主文

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人が、平成元年二月九日付けでした

1  控訴人の昭和六〇年分所得税についての更正のうち総所得金額を三一〇万七七〇〇円として計算した額を超える部分及びこれに対する過少申告加算税の賦課決定

2  控訴人の昭和六一年分所得税についての更正のうち総所得金額を二七五万一〇〇〇円として計算した額を超える部分及びこれに対する過少申告加算税の賦課決定

3  控訴人の昭和六二年分所得税についての更正のうち総所得金額を二七四万九〇〇〇円として計算した額を超える部分及びこれに対する過少申告加算税の賦課決定

をいずれも取り消す。

三  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

主文と同旨

二  被控訴人

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

第二当事者の主張

当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正するほかは原判決事実摘示に記載するとおりであるから、これを引用する。

一  原判決二枚目裏九行目の「営んでいる」の後に「白色申告」を加える。

二  同四枚目表六行目の次に行を改めて次のとおり加える。

本件各更正処分は、推計の方法により行ったものであるが、推計の必要性とは、課税庁が推計の方法により所得金額を認定する際の行政上の指針に過ぎず、処分時に推計の必要性がなかったことをもって、課税処分が違法となることはない。

また、本件においては、以下のとおり、控訴人が税務調査に対して資料の提出を拒むなど非協力で実額の把握が困難であったから、推計の必要性があったものである。

三  同一〇枚目表二行目、三行目の「不服申立期間」の後に「若しくは出訴期間」を加える。

四  同一一枚目裏八行目の「来訪し」の後に読点を加える。

五  同一三枚目裏四行目の「被告の」の前に「推計課税が許されるのは、税務調査に対する納税者の非協力等実額が明らかにできない場合に限られるものであり、処分時にその必要性を欠く課税処分は違法である。そして、本件の場合、」を加える。

六  同二一枚目表六行目の「七月」を「六月」と改め、同七行目の「レシート」の後に「(甲一〇八〇)」を加える。

第三証拠

本件記録中の原審及び当審証拠関係目録記載のとおりである。

理由

一  請求原因1、2の各事実は当事者間に争いがない。

二  推計の必要性について

1  本件各更正処分は推計課税によりされたものである。

ところで、所得税の課税は、納税者の所得の実額によるのを本則とする。しかるに、推計の方法によりその所得金額を算定するときには、各種の統計数値等の間接的な資料に基づいてその所得を推認することから、その推認された所得金額と実額との間に誤差が生じることが免れないものである。このことから、所得税法一五六条の推計の方法による課税が許されるのは、納税者が信頼できる帳簿その他の資料を備え付けておらず、課税庁の調査に対して資料の提供を拒むなどの非協力的な態度をとる等のため、課税庁において、その所得の実額を把握することができない場合に限られるものと解すべきであり、右の場合に当たらないのに推計の方法によりされた課税処分は、違法であるというべきである。

2  そこで、本件各課税処分は右の場合に当たるか否か、つまり推計の必要性があったか否かについて検討する。

(一)  証拠(甲六二四、三四六三ないし三四六五、三四七四、 三四七六、三四七七、乙一七、一九、証人塚崎正人(原審)、同吉本達正(当審)、同中島卓(当審)、控訴人(原審及び当審))によれば、次の事実が認められ、証人塚崎正人(原審)、同中島卓(当審)、控訴人(原審及び当審)の各供述中、この認定に反する部分は採用できず、他にこの認定を左右するに足りる証拠はない。

(1) 控訴人は、昭和四〇年代から、宝石・貴金属及び時計の小売業を営み、そのころから、呉民主商工会(以下「呉民商」という。)の会員であった。控訴人は、本件各係争年当時は、控訴人事業所で右営業を営み、白色申告をしていた。

右事業所は、一方を前面道路に面し、幅約三メートル、奥行き三、四メートル程度の一部屋からなる店舗であり、道路に面する部分はガラス張りで、右店舗内には、商品のショーケース五台、修理台二台、事務机が配置され、空いた部分に椅子数脚が置かれていた。

(2) 呉税務署の所得税第二部門に所属する塚崎正人係官(以下「塚崎係官」という。)は、昭和六三年、控訴人の本件各係争年分(昭和六〇年ないし昭和六二年分)の所得税につき、申告された事業所得金額が正しいかどうかを一般的に確認する調査を担当した。

(3) 塚崎係官は、昭和六三年九月二六日、本件調査のため、控訴人事業所を訪れたが、控訴人は不在であったので、同係官は、応対した控訴人の妻に対し、税務調査のために訪れた旨を述べ、控訴人に呉税務署に連絡する旨を伝えるように依頼した。

控訴人は、そのころ、妻から、その旨を伝えられたが、呉税務署に連絡をとらなかった。

(4) 塚崎係官は、同年一一月二日午前一〇時三〇分ころ、本件調査のため、控訴人事業所を訪れたが、控訴人は不在であったので、同係官は、応対した控訴人の妻に対し、同月四日午前一〇時三〇分ころ税務調査のために訪れるので、本件各係争年分の会計帳簿や原始資料を用意しておくように依頼し、都合が悪ければ、それまでに連絡するように述べた。

(5) 呉民商は、その当時、会員に対する税務調査には、右調査を監視するために、その事務局員や他の会員が立ち会うとの方針をとっていたが、呉税務署では、税務調査に第三者が立ち会うことには守秘義務の点から問題があるとして、第三者の立会いがある場合には、帳簿に基づく税務調査を打ち切る事例がみられた。

控訴人は、呉民商の会員として、他の会員の税務調査に立ち会ったこともあり、右のように税務調査が打ち切られる事例があることを知っていたことから、同月二日ころ、呉民商の税金対策部の責任者であった吉本達正(以下「吉本」という。)に対し、控訴人としては立会人なしで本件調査を受ける意向がある旨を伝えた。そして、吉本との話し合いの結果、控訴人が吉本に調査の前後に連絡を入れることとし、呉民商としては、本件調査に立ち会わないが、立会いができる体勢をとっておくこととなった。

(6) 控訴人の事業所では、主に控訴人の妻が会計処理を担当しており、日々作成した日計票、振替伝票、売掛帳等の原始資料を数か月分まとめて呉民商に持ち込み、右事務局員等が、これに基づいてコンピューターに入力して総勘定元帳に記入し、この総勘定元帳により作成された損益計算書に基づいて、確定申告を行っていた。また、これらの帳簿及び原始資料のうち、当年度分の帳簿及び原始資料は、控訴人事業所に備え付けており、また、過去の年度分のものは、まとめて自宅で保管していた。

控訴人は、同月四日朝までに、自宅にあった本件各係争年分の右各損益計算書、総勘定元帳、日計票等の原始資料、預金通帳等の会計書類を段ボール箱一個、大型の買い物袋二袋、中型の買い物袋一袋に仕分けして詰め、控訴人事業所に運び込み、本件調査に備えた。

(7) 塚崎係官は、同月四日午前一〇時三〇分ころ、所部係官である増本係官とともに、控訴人事業所を訪れ、控訴人に対し、身分証明書を提示して本件調査を行う旨を告げた。これに対し、控訴人は、調査場所、調査方法、調査の経緯等について尋ねるなどし、塚崎係官らは、本件調査は一般の調査である旨を伝え、また、調査場所として、控訴人事業所において調査を行うことが困難であれば、確認すべき控訴人の帳簿等の会計書類を借り受けるか、控訴人の自宅を提供するように申し出たが、控訴人は、帳簿類そのものを貸し出すことはできないとし、また、控訴人の自宅は右事業所から車で三〇分ほど離れた場所にあり、仕事に支障が生じるとして、右事業所で調査するように求めるなどした。さらに、控訴人は、塚崎係官らに対し、税務調査に第三者の立会いが認められるか否かを確認した上で、本件調査には、民商事務局員等の第三者の立会いがない旨を告げ、また、来客があった際には、右調査を中断するように求めるなどした。これらのやり取りをするうちに、同日午前一一時三〇分ころになり、具体的な調査は、同日午後から行われることになった。なお、その際、塚崎係官らは、午後からは、別の予定があると述べたため、控訴人が、右調査を行うように求め、塚崎係官が、午後の調査を行うことになった。

同日午後一時過ぎころ、塚崎係官が、再び控訴人事業所を訪れて、本件調査が行われた。塚崎係官は控訴人に対し、控訴人の事業内容等を確認し、本件各係争年分の損益計算書と昭和六二年分の総勘定元帳の提出を求めたので、控訴人は塚崎係官に対し、予め、用意していた本件各係争年分の会計書類のうちからこれらを提出した。塚崎係官は、控訴人の立会いの下に、右各帳簿の内容を書き写すなどして検討するとともに、控訴人に対し、取引先の内容や、総勘定元帳の経費科目の具体的な内容等を質問するなどして、これを確認し、また、帳簿上の仕分けの誤りを指摘するなどした。この間、塚崎係官は控訴人に対し、日計票の提出を求めたが、控訴人が、これに率直に応じない対応をしたこともあり、右提出を強くは求めなかった。また、右調査の際、来客等があり、塚崎係官は、一、二度、調査を中断して、右事業所の外に出るなどした。

同日午後四時過ぎころ、塚崎係官の昭和六二年分の総勘定元帳等の調査が一応終わったため、控訴人は塚崎係官に対し、引き続いて、昭和六一年分の総勘定元帳等の調査を行うように求めたが、塚崎係官としては、同日、引き続き調査を行うことには時間的に無理がると判断し、同日の調査を終えることにした。控訴人は、塚崎係官のために近所の喫茶店からコーヒーをとり、今後の調査方法等について話をした際、塚崎係官に対し、右元帳の上で疑義のある点に限って原始資料を調査してはどうかと提案したが、塚崎係官は、そのような調査方法はとれないとして右提案を断るなどした。本件調査は、同月七日に引き続き行われることになった。

(8) 塚崎係官は、同月七日午前一〇時三〇分ころ、本件調査のために、控訴人事務所を訪れ、本件各係争年分である三年分の帳簿及び原始資料を一括して提示するように求めた。塚崎係官がそのように求めたのは、全ての会計書類を一度に見ることにより、全体としてどのような会計書類があるのかを把握し、また、三年間の会計の関連性を把握することにより円滑な税務調査を行うことができるが、必要な書類をその都度を少しずつ見ていては、これらの把握が困難で、余計な時間がかかるなど調査に支障が生じるとの判断によるものであった。これに対し、控訴人は、控訴人事業所では、右会計書類を一度に一括して提示すれば、ショーケースが見えなくなるなどの営業上の支障が生じるとして、この要請に応じられない旨をかなり強い調子で述べるなどした。このため、結局、同日午前中には、実質的な調査はされず、控訴人は、塚崎係官に対し、上司と相談して調査方法を変えるように求めた。

そこで、塚崎係官は、午後に再び訪れることとして、一旦、呉税務署に戻り、小林上席調査官と相談した結果、控訴人をさらに説得することとなった。

塚崎係官は、同日午後一時ころ、小林上席調査官とともに、再び、控訴人事務所を訪れた。そして、午前中と同様に三年分の帳簿及び原始資料を一括して提示するように求め、小林上席調査官は、調査場所として控訴人の自宅を提供するように求めたが、控訴人はこれを断った。その際、控訴人は、呉民商の吉本に電話をし、税務調査の調査場所は、本人の事業所や自宅に限られるものか否かを問い合わせ、吉本は、調べて知らせる旨を答えた。塚崎係官と小林上席調査官は、控訴人が、説得に応じないために、同日午後二時一五分ころ、同日の調査を打ち切った。

そのころ、吉本は控訴人に対し、電話で、税務調査の場所は、本人の事業所や自宅に限られるものではない旨を答えた。その際、控訴人は吉本に対し、民商会館の会議室が空いているか否かを尋ね、吉本は、調査の上、空いている旨を回答した。

(9) 控訴人は、同月八日、呉税務署を訪れ、伊達統括官に対し、本件調査の調査方法を変えるように求めるとともに、民商会館の会議室で本件各係争年分の会計書類を提示するとの提案をしたが、伊達統括官は、これに同意しなかった。

(10) 塚崎係官は、同年一二月五日午後一時二〇分ころ、本件調査のため、小林上席調査官とともに、再び、控訴人事業所を訪れたが、調査場所について、控訴人は民商会館の会議室での調査を提案し、一方、塚崎係官らは、これは適当でないとして控訴人事業所での調査を要請するなどして、お互いに歩み寄りが見られなかったため、塚崎係官らは、同日午後三時過ぎころ、こちらで調査する旨を告げ、右調査を打ち切った。

塚崎係官らとしては、控訴人の提案する民商会館では守秘義務の点で問題があると考え、それ以上、具体的な検討はしなかった。

(11) 被控訴人は、本件調査について、控訴人が帳簿書類の提示に応ぜず、非協力であるとして、反面調査を行うなどして、控訴人の本件各係争年分の事業所得につき推計の方法による課税を行った。

(12) 呉民商の民商会館は、控訴人事業所から徒歩で数分の距離にある四階建ての建物であるが、二階に事務局があり、三、四階は、それぞれが独立した会議室となっていた。

呉民商の事務局としては、右会議室を税務調査に使用させるとしても、立会いをするか否かは会員の意思を尊重することにしていた。

なお、呉税務署管内において、自治会館や業界の組合事務所で税務調査が行われた例もあった。

(二)  ところで、税務署の職員は、所得税に関する調査について必要があるときは、納税者に対し、質問し、その事業に関する帳簿書類等を検査することができ(所得税法二三四条)、右調査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定のない実施の細目については、質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまるかぎり、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられているものと解される(最高裁昭和四八年七月一〇日第三小法廷決定・刑集二七巻七号一二〇五頁)。

本件においては、前記認定のとおり、被控訴人の所部係官である塚崎係官らが控訴人に対し、本件調査に際し、本件各係争年分である三年分の帳簿及び原始資料を一括して提示するように要請したものであるが、これは、塚崎係官らの円滑な税務調査に資するためにその必要があるとの判断によるものであって、右調査の手法そのものには、一応の合理性があるものと認められる。したがって、納税者である控訴人としては、特に支障のない限り、右調査を受忍し、これに協力すべき義務がある。

しかしながら、他方、税務調査においては、納税者の私的利益にも配慮してこれを行う必要があることは右に述べたとおりであり、控訴人が、営業時間中に、手狭な控訴人事業所において、塚崎係官らが要請する手法による調査がされた場合には、営業上の支障が生じると考え、これを拒んだことにも無理からぬ点があるものと認められる。その上で、控訴人は、塚崎係官らの要請した右調査の手法に応じるべく民商会館の会議室での会計書類等の提示を提案したのである。これに対し、塚崎係官らとしては、控訴人事業所や控訴人の自宅での調査が好ましく、民商会館の会議室では、守秘義務の点で問題があると考え、これに応じなかったことは前記認定のとおりである。しかし、前記のとおり、控訴人としては、本件調査に応じるべく、予め会計帳簿や原始資料を準備しており、塚崎係官らも、当時、そのことを認識していたこと控訴人は、呉民商の担当者との間で、本件調査には第三者の立会いを求めないことを確認し、その旨を塚崎係官らに伝えており、現に、本件調査中に第三者が立会いを求めるなどしたことはなかったこと、また、控訴人としては、塚崎係官らからの本件各係争年分である三年分の帳簿及び原始資料を一括して提示するようにとの要請に資するために右提案をしたものであり、このことを被控訴人の所部係官に伝えていたことが認められる。これに加え、本件調査が実質的に行われたのは、昭和六三年一一月四日、同月七日及び同年一二月五日であり、その調査期間、調査回数としても、さほど長期間、多数回に渡ったものともみられず、また、本件全証拠によるも、控訴人事業所や控訴人の自宅での調査が好ましいとしても、右場所でなければ本件調査を行えないという事情も必ずしも見当たらないのである。これらのことを勘案すると、塚崎係官らとしては、本件調査に際し、右調査の場所として控訴人事業所や控訴人の自宅の他に適当な場所があるか否かを検討したり、あるいは右調査の手法そのものを多少変えてみるなどの対応を検討したりすべきであったと考えられる。しかるに、塚崎係官らは、これらの検討をすることなく、控訴人が本件調査に非協力であるとの理由で右調査を打ち切ったのであり、このことに、合理的な理由があったものとは認め難い。そうすると、控訴人が、前記の経緯の下で、控訴人事業所での右調査を拒んだ上で前記提案をしたことなどをもって、控訴人が本件調査に非協力であるとか、このため、被控訴人において、その所得の実額が把握できなくなったものと評価することはできない。

また、納税者には、右調査に協力すべき義務があるとしても、その私的利益にも配慮すべきであることは前に述べたとおりであり、控訴人において、当然に、右会計書類を被控訴人の所部係官に貸与したり、右調査のために自宅を提供すべき義務までをも課せられるものではないから、控訴人が、塚崎係官らに対し、右の経緯の下において、本件各係争年分の控訴人の会計書類の貸与や自宅における調査を拒んだこと自体をもって、直ちに右協力義務に違反したものと評価することは困難である。

さらに、被控訴人は、控訴人が、被控訴人の所部係官が昭和六三年一二月七日以降に実施した反面調査を妨害した旨を主張し、塚崎係官は、その陳述書でその旨を陳述する(乙一七)が、控訴人が、被控訴人の所部係官の行う推計のための仕入金額の把握の調査を妨害したとしても、このことをもって、直ちに、推計課税の必要性を基礎付ける事実として捉えるのは相当ではなく、被控訴人の右主張は理由がない。

(三)  したがって、本件各更正処分において、控訴人が本件調査に非協力であるために所得金額の実額を把握し得ないとして推計の方法により課税をする必要性があったものとは認められない。

3  なお、被控訴人は、控訴人の実額反証の主張に対する反論としてではあるが、本件各係争年分の日計票等の会計資料には不備がある旨を主張する(原判決事実摘示七3記載の主張)。そこで、念のため付言するに、控訴人が、総勘定元帳等の帳簿や日計票等の原始資料を作成し、これを控訴人事業所に備え付けていた経緯は、前記2(一)(6)に認定したとおりであり、本件記録によれば、これらの会計書類中には、日計票の記載と総勘定元帳の記載との間に齟齬する箇所があり、また、控訴人の事業に関係のない個人的支出にかかるものが経費として混入しているものがあるなどの不備が見られるが、これらの点を考慮しても、これが控訴人による実額反証のための会計書類として十分なものであるか否かはともかくとして、右会計書類によっては所得金額等の実額を把握し得ないほどその内容が不正確で信頼性に乏しいものであったとまでは認め難い。したがって、この点からも、被控訴人において推計の必要性があったものとは認められない。

三  そうすると、その余の点について判断するまでもなく、本件各更正処分のうち、原判決別表1の各年分の確定申告欄記載の額を超える部分及びこれらに対する過少申告加算税の各賦課決定処分は違法となる。

四  以上によれば、控訴人の本訴請求は理由があり、これと異なる原判決は相当でない。

よって、本件控訴は理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九六条、八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 寺本榮一 裁判官 金子順一 裁判官 亀田廣美)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例